oasis『Don’t Look Back In Anger』マンチェスターテロ事件のアンセム

イギリス・マンチェスターでテロ事件が起こりました。

2017年5月22日の夜、場所はアリアナ・グランデのコンサート会場でした。
アリアナ・グランデが最後の曲『One Last Time』を終えた直後に、会場の出入口近くのロビーで自爆テロによる爆発が起こり、子供を含む22人の死者、負傷者59人を出す大惨事となりました。コンサートが終わって、帰宅しようと入り口に人々が集まっていたタイミングを狙われました。

6月3日には、ロンドン橋付近でもテロ事件が発生し、8人が犠牲となり、容疑者の3人は射殺されました。

いずれのテロ事件も、IS(イスラム国)が犯行声明を出しています。

マンチェスターのテロ事件を伝えるABCニュース

立て続けに起きたテロ攻撃によって、イギリスの人々の心には、怒り、悲しみ、不安、様々な感情がうずめき、国全体が大変な衝撃を受けました。

マンチェスターのテロが起きた後、マンチェスター出身のバンドである元oasisのメンバー、ノエルとリアムは異口同音に戸惑いの気持ちを口にしています。

ノエル「俺は事件の翌朝、ラジオのニュースで知ったんだ。あの会場ではライブをやったこともあるし、爆発のあったまさにあのロビーに立ったこともある。
言うべき言葉が見つからないが、テロリストに言ってやりたいことはある。放送禁止用語ばっかりになるけどな。」

リアム「こんなもん許せない。悲しいよ。でも、俺にできることなんてあるかい?どうしようもない。同じように世界中の子供たちや多くの人々が死に直面してるんだ。
前の日は早く寝たんだ。22時くらいだったかな。それで、翌朝起きたら一番上の兄貴からスマホにメッセージが来ててさ、テレビをつけたんだよ。信じられなかった。」

テロの脅威と不安にイギリス全土が包まれる中、ある曲が人々に歌われ始めました。

oasisの『Don’t Look Back In Anger』です。

事の発端は犠牲者を追悼するための集会でした。
一人の女性が歌い始めると、集まった人々が呼応し、自然発生的に合唱となったのです。

追悼集会で『Don’t Look Back In Anger』が歌われた時の実際の映像

この集会を機に、イギリス全土で歌われるようになり、今ではマンチェスターテロ事件のアンセム(礼拝式で歌われる合唱曲、シンボル曲)として知られるようになりました。

さらに歌の輪は国外にも広がり、6月13日にフランスで行われたサッカーの国際試合イングランド対フランス戦では、試合前に『Don’t Look Back In Anger』が演奏され、フランス人で埋まったスタジアムにも関わらず大合唱されました。

スタジアムの観客が撮影した大合唱の様子

しかし、なぜ『Don’t Look Back In Anger』がテロ事件のアンセムとして人々に受け入れられたのでしょうか?

一人の女性が歌い始めただけでイギリス全土、さらに海を越えてフランスや他の国にまで広がることは普通はあり得ません。

この曲が人々に受け入れられた可能性として、まずひとつ目に考えられるのは、マンチェスターはoasisのメンバーの出身地だということ。
マンチェスターの地元の人々にとってoasisは、労働者階級から大スターになった地元の誇りです。中心メンバーであるノエルとリアムのギャラガー兄弟のキャラクターも深く愛されています。

ふたつ目に考えられるのは、歌詞です。
テロの惨劇がすぐ目の前に現れてどうすればいいのか迷う人々に、『Don’t Look Back In Anger』の歌詞は、一つの道筋を見せてくれているのです。

『Don’t Look Back In Anger』
作詞:Noel Thomas Gallagher

Slip inside the eye of your mind
Don’t you know you might find
A better place to play

君の心の瞳に滑り込めば
見つかるかもしれないって分かってるだろ
もっと楽しい場所をね

You said that you’d never been
But all the things that you’ve seen
Are gonna fade away

君はありえないって言っていたね
でも、君が見てきたものは全てゆっくりと消えてくんだよ

So I start a revolution from my bed

Cos you said the brains I have went to my head
Step outside the summertime’s in bloom
Stand up besides the fireplace
Take that look from off your face

Cos you aint ever gonna burn my heart out

だから、俺はベッドから革命を始めるんだ

君が言ったからだよ
「あなたはうぬぼれてる」
「夏真っ盛りの外に飛び出しなよ」
「暖炉の傍に立ちなさい」
「そんな顔してないで」

君は俺の心を燃やし尽くそうとはしなかった

So Sally can wait, she knows its too late
As were walking on by

Her soul slides away, but don’t look back in anger
I heard you say

サリーは待ってくれる、もう手遅れだって彼女には分かっているんだ
俺たちが並んで歩き続けるにはさ

彼女の魂は離れてく、「でも怒って振り返ってはダメよ」と
君が言ったのが聞こえたんだ

Take me to the place where you go
Where nobody knows
If its night or day

どこへでも連れて行ってくれよ
どこか誰も知らない場所へ
夜でも昼でもいいからさ

Please don’t put your life in the hands
Of a Rock n Roll band
Who’ll throw it all away

でも、どうか君の人生を委ねないでくれ
ロックンロールバンドの奴らには
君の人生を全て投げ捨てちまうような奴らには

※英詩はアルバム『(WHAT’S THE STORY)MORNING GLORY?』の歌詞カードから一字一句変えず忠実に引用しています。そのため実際に歌で聴くのとは少し異なっていたり、アポストロフィーがない部分もありますが、ご了承ください。

単純に歌詞を読めば、男女の別れを歌っているように思えますが、
感情的になっている人を諭す言葉にも聞こえます。

「すでに起こってしまったことを振り返って感情的にならないで」
「君の人生をめちゃくちゃにしてくる奴らに振り回されるな。冷静になれよ。せめて今だけはさ。」

追悼集会で最初に歌い始めた女性は、ガーディアン紙の取材にこう答えています。

「私はマンチェスターを愛していて、私にとってオアシスは人生の一部でした。子供の頃からね。『Don’t Look Back in Anger』は、今の私たちにふさわしい歌です。
私たちは起こったことに対して後ろ向きになってはいけない。前を向かないと。」

作詞をしたノエルはテロで心を痛めている人々に向けて書いたわけではないでしょう。
こんなことになるとは想像もしていなかったはずです。

しかし、普遍的な真理を説いたこの歌詞は、本来の意味を越えて人々の心に刺さったのだと思います。

事件後、多数のミュージシャンたちがチャリティーコンサートを開きました。

アリアナ・グランデは2017年6月4日にマンチェスターで『One Love Manchester』と銘打った慈善公演を実施。5万人の観客が集まった他、Facebookなどでも生中継されました。
コールド・プレイ、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、マイリー・サイラス、ファレル・ウィリアムスらが共演し、アリアナ・グランデとコールド・プレイが『Don’t Look Back in Anger』を一緒に歌う場面もありました。

さらにサプライズでリアム・ギャラガーも登場し、oasisの名曲『Live Forever』などを熱唱。

収益金は全て被害者や遺族のために寄付されました。

ノエル・ギャラガーもこのコンサートに招待されていましたが、残念ながら都合がつかなかったため辞退しています。

これを知ったリアムはツイッターで猛烈に批判。
「ライブに兄貴が出なくて悪かったなマンチェスターのみんな。失望してるよ」
「ライブの日、ノエルたちは国内にいなかったみたいだぜ。俺たちは飛行機に乗って子供たちに曲を届けるんじゃなかったのかよ。悲しい奴だ、アホがよ。」

リアムはノエルが来なかったことにめちゃくちゃムカついているようです。

しかし、ラジオXのDJゴードン・スマートは真実を語りました。
「ノエルが批判されてるニュースを見たんだけどさ。みんな知らないのは仕方ないよね。ノエルが言わないから。俺が言うよ。ノエルは『Don’t Look Back in Anger』が人々に歌われていることを知ってすぐに、曲のロイヤリティーが被害者家族に寄付されるように手配したんだ。ライブが発表される前のことだよ。

またコールド・プレイのクリス・マーティンはこうツイートしています。
「ノエル、僕たちが『Don’t Look Back in Anger』と『Live Forever』を演奏することに賛成し、励ましてくれたことを感謝しています。物理的な問題で参加できなかったことはみんな知っています。想いだけでもあの場所にもたらしてくれてありがとう。あれほど素晴らしい曲を貸してくれてありがとう。愛を。」

イタリアにいてライブに出演できなかったノエルですが、実はこっそりと巨額の寄付をしていました。そのことを誰にも言わないところがノエルらしいです。

テロ発生以降、イギリスのファンたちからはoasisの再結成を望む声が多く上がっています。

NO WORDS

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参考外部リンク

JOYSOUND『Don’t Look Back In Anger』歌詞

‘Manchester will recover’ says woman who started oasis singalong 

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