Bob Dylan『Knockin' On Heaven's Door』 詩人の戦争批判

 

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誰もが認めるフォークの神様"Bob Dylan"

詩人Bob Dylanと呼ばれることもあります。

ミュージシャンとして初めてノーベル文学賞を2016年に取ったのも記憶に新しいですね。

 

ノーベル文学賞を取るほどの天才作詞家なので、ボブディランの曲はさすがに味わい深い詩ばかりです。

あまりにも名曲が多いので、この記事ではどの曲を紹介しようか迷いに迷ったのですが、
多くのミュージシャンがカヴァーしまくっているこの曲にしようと思います。

 

『Knockin' On Heaven's Door』

 

1941年生まれのボブ・ディランは現在70代。
プロミュージシャンとしてのキャリアは50年以上!!

驚くべきことにまだこの歳になっても現役で、小さな劇場を中心に毎年ツアーをしています。
しかも年間100公演!!
日本にも来ています。超人です(笑)

 

言うまでもなく、ディランは"超"がつく一流ミュージシャンです。

でも、超一流ミュージシャンの条件ってなんでしょう?

ノーベル賞やピューリッツァー賞を取ること?
レコードを1億枚も売り上げたこと?
大統領自由勲章をもらったこと?

私は超一流ミュージシャンの条件の1つはこれじゃないかと思うんです。

「多くのミュージシャンたちに愛され、数多くの楽曲をカヴァーされること」

 

「歌」って、みんなに歌われたら本物だと思います。
プロがカヴァーするだけではなく、私たちが鼻歌で歌ってもいいし、カラオケでもいい。
日常生活で気分が乗った時に自然に出てくる歌というのは、その人の脳の奥・魂まで染み渡っているはずです。
そんな曲を作れる人こそ「超一流」だと思うんですよね。

 

『Knockin' On Heaven's Door』はたった4つのコードで弾けるので、ギターをやる人なら一度は弾いたことある曲でしょう。
プロのミュージシャンたちも自分のCDに収録したり、ライブで演奏したりと、多くの人から愛されてやまない名曲です。
日本人でも、B'zや忌野清志郎、大黒摩季、木村拓哉がライブやテレビで演奏しているのを見たことがあります。

ジャズの世界では『枯葉』などスタンダードと呼ばれる曲がいくつもありますが、ロックの世界ではまだスタンダードと呼ばれている曲がないかもしれません。

『Knockin' On Heaven's Door』は今はまだロック・スタンダードと呼ばれているわけじゃありませんが、いずれそう呼ばれる日が来る気がしています。

 

では、それほどの名曲は一体どんなことを歌っているのか、和訳して見てみましょう。

 

 

『Knockin' On Heaven's Door』
作詞:Bob Dylan

Mama, take this badge off of me
I can't use it anymore.
It's gettin' dark, too dark for me to see
I feel like I'm knockin' on heaven's door.

ママ、俺からこのレッテルを外してくれ
もうこれは使えないんだ
暗くなってきた、暗すぎて俺には見えないよ
俺は天国の扉を叩いている気がする

Knock, knock, knockin' on heaven's door

天国の扉をノックしてる ×4

Mama, put my guns in the ground
I can't shoot them anymore.
That long black cloud is comin' down
I feel like I'm knockin' on heaven's door.

ママ、俺の銃を地面に置いてくれ
もう彼らを撃てないんだ
あの黒い大きな雲がこっちに来たよ
俺は天国の扉を叩いている気がする

Knock, knock, knockin' on heaven's door

天国の扉をノックしてる ×4

 

 

1973年に発表された曲です。
この年、アメリカはベトナム戦争を終結するパリ条約を結びました。

ベトナム戦争は「アメリカが唯一負けた戦争」と言われているほど、アメリカ兵に多くの犠牲者を出し、アメリカにとっては何の成果も得られなかった戦争です。

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また枯葉剤など人体に重大な悪影響を及ぼす兵器を米軍が使ったり、多くの戦場カメラマンが従軍するのを許されたので、戦争の生の悲惨さが映像として全世界に報道された戦争でもあります。
(※ベトナム戦争後は、戦争を映像として伝えられることに不都合を感じた各国政府が、プレス関係者の従軍を厳しく規制するようになりました)

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戦争が終結し、ベトナムで戦っていた全てのアメリカ兵が帰国しました。
しかし、兵士たちにとって戦争は終わらなかったのです。

多くの帰還兵が精神病を患い、自殺者が後を絶ちませんでした。
帰還兵の自殺者の数は、ベトナムで戦死した米兵の数よりも多いという大惨状でした。

帰還兵たちの心を苦しめたのは、敗戦と言えるほどの苦しい戦争の経験と、報道で戦争の悲惨さを知っていたアメリカ国民からの激しいバッシング。
国のために命をかけて戦ってきたのに、国に帰ったら大批判されたのです。

帰還兵たちの心には何の救いももたらされなかったため、この世界に絶望して次々と自らの命を絶っていきました。

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『Knockin' On Heaven's Door』は、元々はディラン自身も出演した映画『パット・ギャレット&ビリー・ザ・キッド』で、老保安官が死ぬ場面のために書き下ろされた曲ですが、
こういった時代背景を考えると、ベトナム帰還兵の若者が良心の呵責に苦しみ、自らの命を落としそうになっている状況を、ディランは確信犯的に歌に込めたのではないかと考えられています。

歌詞の最初に出てくる"this badge"とは、映画の中の保安官がつけているバッジという意味と、ベトナム帰還兵というレッテルの両方の意味が含まれています。
保安官にとっては勲章のようなものですが、ベトナム帰還兵にとっては汚名と言ってもいいかもしれません。

この曲は映画の挿入歌に見せかけて、実はアメリカ政府、アメリカ国民、そして戦争を痛烈に批判しているのです。

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世界に大きなインパクトを与えた『Knockin' On Heaven's Door』は様々なアーティストたちにもカヴァーされています。
その中から有名なミュージシャンたちが演奏している動画を紹介します。

 

三大ギタリスト Eric Clapton
レゲエ風アレンジ

 

カナダの歌姫 Avril Lavigne
めちゃ可愛いな、声も顔も表情も

 

90年代ロックの象徴 Guns N'Roses
ハードロックスタイル!!

 

U2
歌詞を変えちゃうボノ!!

 

Jon Bon Jovi
しっとりしっぽり・・・

 

皆さんはどの『Knockin' On Heaven's Door』がお気に入りでしょうか?

ロック好きな私はガンズのアレンジが最高に好きですね~

 

 

 

ディランはあまりにも天才なので、あらゆる人から尊敬されまくっています。

アメリカ国民にアンケートを取ると過去最高のシンガーソングライターという結果になるし、同業者は猫も杓子もリスペクトリスペクトと言うし、メディアはボブ・ディランの特集を何度も何度も繰り返し組んでは絶賛や批評をしまくりです。

日本人でも、吉田拓郎、村上春樹、浦沢直樹、甲本ヒロトなどがその素晴らしさを強調して語る、まさに天才が尊敬する天才です。京都大学の学長も入学式の式辞の中でボブディランの歌詞を引用していましたね。

世界中どこへ行っても人が集まるし、そのうえノーベル賞まで受賞してしまいました。

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当のディランはもうあちこちで騒がれるのにうんざりしているらしく、インタビューなどは面倒なのか、けっこう適当なことを言ったりします(笑)

ノーベル賞の受賞が決まっても二週間もメディアにコメントを出さず雲隠れしていた理由について聞かれたときには、「あまりのことに、言葉が見つからなかった」と言っていますが、
天才詩人が二週間も言葉が見つからないなんてことあるはずもないです。
ディランしか使えないジョークですね(笑)

本心はきっとこれ以上騒がれるのが面倒なだけだったのでしょう。

尊敬され過ぎるのも大変そうですね。

 

 

<当記事の画像引用元>
公式サイト
https://www.bobdylan.com/

<関連サイト>
wikipedia 天国への扉
公式サイト 歌詞ページ

 

-歌詞の本当の意味