出会いと別れの季節ってありますよね。
3月、4月だけじゃなく、結婚や転職など人生にはいろいろな転機があります。
今回はそんな季節にぴったりの曲を、歌詞の日本語訳と一緒に紹介していきます。
『Good Riddance(Time Of Your Life)』
グリーンデイのファンには言わずもがなの名曲ですね。
私と同年代(松坂世代)の方ならみんな一度は聴いたことがあると思います(笑)
いやぁー心に沁みますねー。沁みわたりますねー。
バリバリのパンクロックバンドが作ったアコースティックな一曲。
ゴリゴリのメタルバンドが作ったバラードとか、なんか良いですよね(笑)
『Good Riddance』はアメリカでも人気で、卒業式、結婚式、葬式などに好んで流されるそうです。私も高校を卒業して、大学に入った頃によく聴いていました。
グリーンデイのライブではアンコールの最後に歌われることも多いんですよ。
2分30秒という短い演奏時間はいかにもパンクらしいですけど、
この曲に込められたメッセージは、あなたの人生が終わるまでずっと響き続けると思います。
グリーンデイに関しては以下の記事で、すごく詳細に書かせて頂きました。
以下の記事から読んで頂いた方が、この記事の内容が分かって頂けると思います。
ビリージョーとマイクの暗黒の青春時代から、バンドとして大成功を収めるまでの物語です。
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Green Day 『When I Come Around』 ビリージョーとマイクの青春
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人生を悲観し、嘆き、苦しみ、もがきながら生きていた10代。
1stアルバムから3rdアルバムの『Dookie』までは、そんな苦難の人生を罵るような歌詞のオンパレードでした。音楽に10代の人生を全てぶつけていたんですね。
そんなグリーンデイも年齢を重ねると、歌詞の内容に変化が現れるようになります。
この記事で紹介する「Good Riddance(Time Of Your Life)」はビリージョーが25歳の時に発表されました。
彼らにどんな変化が起きたのでしょうか?
まずは、3rdアルバム『Dookie』で大成功した後の物語を見ていきましょう。
1995年 ビリージョー23歳
4thアルバム『Insomniac』発表
『Dookie』で音楽界にその名を轟かせたグリーンデイは精力的に活動を続けます。
『Dookie』の1年後に発表された4thアルバム『Insomniac』は700万枚を超えるヒットを記録。グリーンデイの評価を揺るぎないものにしました。
またこの頃、メンバーたちの私生活には大きな変化がありました。
この年ビリージョーに長男が、トレに長女が誕生。1996年にはマイクも結婚し、長女が誕生します。
1年のうちにメンバー全員が人の親になったんです。
タイミングって重なるものですね(笑)
売れない頃の極貧生活とは打って変わって、Green Dayは音楽でチャンスを掴み、家庭を持ちました。
社会的地位も、名誉も、お金も、愛情も、すべてを手に入れたように世間からは思われたのですが…。
実はこの時期、バンドは結成以来の危機に陥っていたのです。
2年間も続いたツアー生活の疲労、世界中どこへ出かけても追ってくるメディアの取材とパパラッチ。パンクバンド仲間からの嫉妬。たまに家に帰ってもファンが訪れて来て家族の時間も満足に過ごせません。
何をしても、何を言っても、全ての行動が世間から批評の対象にされました。
これは有名人になった代償ですが、メンバーはみんな肉体的にも精神的にも極度の疲労を抱えるようになったんです。
4thアルバム『Insomniac(=不眠症)』はそんな彼らの心境を表すかのように、フラストレーション爆発のサウンドと歌詞で溢れてます。
Stuck With Me
作詞:Bille Joe Armstrong
I'm not part of your elite
I'm just alright
俺はお前らエリートどもの仲間じゃねえよ
俺は大丈夫さ
Class structure waving colors
Bleeding from my throat
階級構造は国旗をなびかせ、
俺の喉から血を流させる
このアルバムの代表曲『Stuck With Me』では、
「俺たちは貧富の差の激しいアメリカ社会にボロボロにされてきたんだ。今はエリート側に回ったけど、心までエリートになったわけじゃない」と必死に否定している姿が浮かびます。
「俺たちをそこらの売れた奴らと一緒にするな。反吐が出る。俺たちは権力に虐げられてきたんだ。魂はパンクのままさ。」
まともな愛情を受けず、凄まじい貧困の中で育ち、その底辺で培われたパンク(反逆)精神。
しかし、売れたことで憎しみさえ感じていたエリート側に自分たちが立ってしまったことへの罪悪感。成りあがった者にしかわからない疎外感。
アメリカの貧富の差の現実を、心と体で感じてきたのがグリーンデイなのかもしれません。
1996年 ビリージョー24歳
急遽ツアーをキャンセルし、活動を休止する
とうとうストレスの限界に達したグリーンデイは予定されていたツアーを全てキャンセル。
メディアにも一切出演せず、休養をとることにしました。
彼らには家族や友達と過ごし、心を取り戻す時間が必要だったんですね。
しかし完全に休養していたのはわずか1ヶ月ほどで、以降は週5日の練習を欠かしませんでした。
さらに次のアルバムの製作にも取り掛かります。
レコーディング作業は1日に15時間、それが2~3ヶ月続きました。
グリーンデイの音楽性はシンプルですが、
シンプルなのに大観衆を魅了できるのは、こうした努力で培われた確かな技術の裏付けがあるからです。
1997年 ビリージョー25歳
5thアルバム『Nimrod』発表
『Nimrod』は200万枚以上のセールスを記録。
このアルバムはこれまでに発表した4枚のアルバムとはアプローチを変えていて、
"Green Dayの変化"を世間に示したアルバムとなりました。
音楽的な可能性を広げるための様々な実験的な挑戦をしています。
エレキギターを軸にしたサウンド一辺倒ではなく、ホーンやストリングスを取り入れたり、インスト曲やバラード曲にも挑戦しています。
ライブでは弾き語りで歌われることの多い『Good Riddance(Time Of Your Life)』も、このアルバムに収録されました。
アメリカの音楽評論家たちからは「従来のファンの期待を良い意味で裏切り、新しいファン層を獲得できた作品」と言われています。
守るべき家族ができ、社会的な地位が激変し、心の葛藤を経て、これまでとは異なるスタイルの音楽を創り始めたんですね。
この作品以降、さらにグリーンデイは変化を見せていくようになります。
アルバム発表後には15ヶ月間で238本というツアーもこなし、パワフルな姿をファンたちに見せてくれました。
『Nimrod』の歌詞について、ビリージョーはこう言っています。
「歌詞に書かれていることは全て正直な真実なんだよ、俺の生活を映しているのさ」
「親になったことで気付いたこと、変化したことを詩に込めたんだ」
少しだけ話はそれますが、
エレファントカシマシの『俺たちの明日』(歌詞:宮本浩次)にはこんな一節が出てきます。
10代 憎しみと愛入り交じった目で世間を罵り
20代 悲しみを知って 目を背けたくって 街を彷徨い歩き
30代 愛する人のためのこの命だってことに あぁ 気付いたな
若い時は自分のことで精一杯だけど、様々な経験をし、家族を持つと、自分の命よりも大切なものが見えてくる。
ビリージョーもそんな経験をして、歌詞に変化が起きていったのかもしれません。
若い頃のグリーンデイの歌詞はいつも自分が中心でしたが、年齢を重ねると共に周りの人たちや社会に対するメッセージが増えていきます。
視線が心の内側だけでなく、外側にも向くようになっていきました。
これから歌詞を紹介する『Good Riddance(Time Of Your Life)』は元々はビリージョーが恋人と別れた時に書いた歌だそうですが、人生の様々な場面で勇気づけられる歌でもあります。
人生の岐路に立たされた時に、聴き返したくなる名曲です。
『Good Riddance(Time Of Your Life)』
歌詞:Billie Joe Armstrong
Another turning point; a fork stuck in the road
Time grabs you by the wrist; directs you where to go
また次の分岐点だ、道は2つに分かれている
時は君の手を取り、行くべき道へ導いてくれる
So make the best of this task and don't ask why
It's not a question but a lesson learned in time
だからこの試練にベストを尽くせ、なぜ?なんて聞くな
それは質問することじゃない、時の流れの中から学ぶことなんだ
It's something unpredictable but in the end is right
I hope you had the time of your life
予想もつかないことでも、結末は正しいものさ
君に幸せあれ
So take the photographs and still frames in your mind
Hang it on a shelf of good health and good time
写真を撮って、君の心に飾るんだ
健康で幸せな時間の棚に飾るんだ
Tattoos of memories and dead skin on trial
For what it's worth,it was worth all the while
思い出のタトゥーと試されて死滅した皮膚
それがどれほど正しいのか分からないけど、時間を費やすだけの価値があった
It's something unpredictable but in the end is right
I hope you had the time of your life
予想もつかないことでも、結末は正しいものさ
君に幸せあれ
数々の厳しい試練を乗り越えてきたビリージョーだからこそ書ける言葉ではないでしょうか。
「今は思った通りに全力を尽くせ。正しいのか間違っているのか、成功するのか失敗するのか、いつか時間が教えてくれるんだから。どうか人生を楽しんでくれ。」
そんなメッセージに聴こえます。
もしかしたら、親となったビリージョーが自分の子供に伝えたかったメッセージなのかもしれません。
『Good Riddance(Time Of Your Life)』と長渕剛さんの『乾杯』は少し似てませんか?
歌詞内のシチュエーションは異なりますが、本質的なメッセージは同じように感じます。
2度繰り返される"I hope you had the time of your life"という歌詞。
「I hope」は「俺は願うよ」
「you had the time of your life」はHave a good time(楽しんでらっしゃい)の変形みたいなもので、「君は人生を楽しんだ」という意味です。
直訳すれば「君が人生を楽しんだことを俺は願うよ」となりますが、
『乾杯』の歌詞のように「君に幸せあれ」と訳せば、ぴったりと心情に合いますね。
Green Dayについてもっと詳しく知るなら↓
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Green Day 『When I Come Around』 ビリージョーとマイクの青春
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<当記事の画像引用元>
WARNER MUSIC
Instagram @greenday
<関連参考サイト>
長渕剛『乾杯』うたまっぷ.com